落ちて行く

好きかと聞かれたら、自信を持って頷ける。
愛していたかと聞かれたら、はっきりとは分からない。

彼女と僕の関係は、きっと戦友のようなものだった。



「大切なお友達だったのですね」
「はい、とても」
「あの、スザク。もしかして…」
「はい?」
「いいえ。」


ユフィに、ルルーシュのことを伝えることは無かった。ルルーシュの方にも、騎士になったという報告以来、ユフィについて話すことは無かった。ルルーシュがブリタニア皇室について、過去について、嫌悪を持つのは当然のことと思った。


ユフィは気付いていたのだろうか?ルルーシュのこと、ナナリーのこと、ゼロのこと。だから、あの時はっきりとした言葉を飲み込んで、不安げに笑ったのだろうか。


「スザク」
「はい」
「あなたはもし、私が過ちを犯したらどうしますか」
「ユーフェミア様が行うことは、全て正しいです」

判断を下すなど、おこがましいことは出来ない。スザクが真っ直ぐな瞳を向けると、ユフィは首を左右に振った。

「私だって人間です。あなたと同じ。何かに固執するあまり、何かを見失うこともある。間違った結果を突きつけられた時、あなたはあなたを許したように、私を許してはくれるでしょうか。」

ユフィの顔が曇る。性急に進めてしまった政策に、悩んでいるのだと思った。スザクは神妙に頷く。

「あなたの背負う結果と重責を共に担い、あなたを罪の恐怖から守り抜き、決してあなたを憎むことはないと思います。あなたの騎士としてでは無く、僕個人として。」






純粋にひたむきに、世界の平和と共生を願った少女は、美しく儚げに微笑んだ。
成功を祈った第一歩が、一人の男の手によって歪んでしまったという現実も知らぬままに。


逝ってしまった。 そうだ、罪は俺が背負う。彼女の願いは俺が叶える。彼女は俺で、俺は彼女のようなものだった。

愛しているかと聞かれたら、はっきりとは分からない。



スザクは冷たい炎をたたえたまま、罰を受けるべき相手……ゼロを追った。




2008/4/4 終わり
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