押し付けられた銃口

冷たい音を立てて、閉じられた扉。スザクはそれをただ見ていることしか出来ない。全身で嫌だ、離れたくない、と叫んでいるのに、その声は音にならない。そうして少年は、強い願いも叶わないことがあると知った。



「ゼロ……っ!」

やっとゼロを捕獲出来るという所で、赤い機体の邪魔が入る。舌打ちをしてそれに応戦をした。刃を交す中で、クリアになっていく思考があった。命令と言う明確なルールに従って、敵を倒す。まるで機械人形のような、自分。それが自分。その瞬間だけ、スザクは揺るぎない自身を自覚する。

「邪魔をするな……!」
中距離攻撃でも俊敏さにより避けられる。だったら直接、至近距離で切るだけだ。

刃と刃がぶつかる、金属音。衝撃がスザクの体にも伝わった。それから微かにフラッシュバックする、あの感覚。

(ナイトメアだったら、分からないもんなあ?)

邪揄する同僚の台詞が浮かぶ。

そんなことはない。否定と反発の意をこめて頭を振った。 ちゃんと在る。人を切る、この感覚。


「こ、のぉぉぉぉ!!!」


スザクは半狂乱になりながら叫んだ。その誓いは、最早習性になっていたのだろうか、それとも足枷となっていたのだろうか、そんな状態になっても、彼は操縦席は狙わない。


ランスロットの決死の攻撃を受け、深刻な痛手を受けた赤いナイトメアは、素早く撤退をしていった。

「はぁ、はぁ、……」

スザクはランスロットの中で荒い呼吸を繰り返した。ゼロの乗っていた機体の中は、もう空になっている。 目の前が真っ暗になり、握り締めた手の甲に一粒涙が落ちた。

スザクの脳裏に浮かんだのは、扉を閉めて行った彼、ルルーシュだった。どうしてだろうか。根拠は無い。ただ、ダールトンが示唆した可能性に、心臓を掴まれたような感覚が沸いた。忘れていたわけじゃない。意図的に目を反らしていた。

「スザクくん!?大丈夫?」

セシルの言葉にはっと我に帰る。スザクは頷いた。

「大丈夫です。ただ…ゼロを逃がしました。すいません。」


それだけ答え、通信回戦を切った。再び、理由の分からない涙が頬を伝って行く。

これは、僕が僕を殺せないことに泣いているのだろうか。
それとも、ゼロを殺せないことに泣いているのだろうか。


闇に包まれた視界が戻るには、もう少し時間がかかりそうだった。




2008/03/28 終わり
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