「スザク、どうかしたのか?」
「ルルーシュ、」
心配そうにこちらを伺うルルーシュに、首を振る。ナリタの一件の後、スザクの変化に気付いたのは学園ではルルーシュだけだった。
実際、スザク自身も認識しているかは微妙だった。再確認した自身の罪と行動の理由を、矛盾を含めて抱え込み直したために、違和感を覚える程の悟りと締念の境地に達していた。もう揺らがない、そう思っていた。
しかし。
ルルーシュが手を伸ばし、スザクの頬に触れる。
「やっぱり、お前に軍は合わないんじゃ…」
その言葉がもし、出会ってすぐに発せられたなら、もしくは、もっと時間が経ってからかけられたなら、スザクは笑って否定する事ができただろうと思う。だが、このタイミングはルルーシュにとって失態だった。スザクは気付くと、彼の手の平を叩き、彼の方を冷めた視線で見つめていた。
虚を突かれたルルーシュが、何かを問うかのように口を開く。スザクはそれを遮って、低いトーンで声を出した。
「君には関係ない」
「スザク、」
「僕は、ゼロを捕まえなくてはいけない」
ルルーシュの瞳が大きく開かれた。スザクは続ける。
「シャーリーのお父さんだけじゃない。あの事件で、たくさんの犠牲者が出た。ゼロのやり方は間違っているんだ」
もしこの言葉があの一件のすぐ後ではなかったら。その前か、あるいはもっと時が経っていたら。ルルーシュはおそらくは不敵な笑みで、スザクに結果論なんかを突き付けて反論しただろう。だが、これもまたタイミングが悪かった。
目前のルルーシュは唇を噛み締め立ち上がり、黙ってスザクから離れて行った。その行動の違和感に気付く程、まだスザクの心は回復していなかった。
2008/03/28 終わり