(昨日はルルーシュ、すごく激しかったなぁ…)
スザクは頬を赤く染めながら、パイロットスーツに身を包んだ。
いつもは仕事中にそんなこと思い浮かべたりはしないのだけれど、今日は別だった。
あれほどルルーシュの方から求められたこともなかったので、一人でさびしく過ごす時間も実は無駄ではないのかもしれない。
よし、今日もしっかりがんばろう。
気持ちを切り替えて、ランスが置いてある特派に向かった。
のだけれど。
「う〜ん、」
「ロイドさん…何か不備がありましたか?」
試乗訓練前の、身体検査時に、ロイドが首をひねっていた。
前にも経験があるこの唸り声に、スザクは嫌な予感がした。
「悪いってわけでもないけどねぇ。やっぱり今日は搭乗はやめよう」
「えっ、」
「書類もたまっててさ。手伝って」
ロイドはそう言ってデスクに座った。仕方なく、スザクも隣に腰かける。
報告書・始末書なんかは、ロイドの仕事ではあるが、特派全体の仕事でもある。
デスクワークは正直苦手だったが、スザクは真面目に仕事にとりかかった。
と、言っても、ロイドに指示された書類には判を押す、という簡単な仕事だったが。
「ロイドさん、こんなに溜めてたんですか」
「来る日も来る日も、たくさん来るんだよ。紙の無駄だよねぇ。」
「そんな言い方」
「ね、スザクくん、セシルくんもいないし、ちょっと楽しいことしない?」
「え?」
ロイドのメガネの奥がキラリと光った。こういう時の彼はろくなことを考えていないと、スザクはすでに知っている。
「こ・こ、すごく腫れてるよね?そんなに使った?」
「ちょ、ロイドさん!」
体を丁度包み込むパイロットスーツの、胸のあたりを手で触れられる。
驚いてその腕をつかんだら、イタイイタイ、と大袈裟に手を離した。
「一応、上官だからね?」
「だったら、上官らしいことをしてください!」
「セシルくんみたいなことを言うんだねぇ。」
まったく、漂漂としていてつかめない人だ。
呼吸を整えていたら、腕を掴まれて少し体を引き寄せられた。
「ロイドさん?」
「僕自身も不思議なんだよねぇ。ランス以上に、君に興味があるかもしれない」
「え……」
言葉の真意を測りかねていたら、チクリと腕に痛みが走った。
見るともう手おくれ、注射器から透明な液体が血管へとどんどん注入されている。
「実験材料として。全く人間は面白いね。」
「ロイドさ、何を……」
「別に。ただ君の身体能力はこの場合邪魔になるから、動きを奪っただけ。感度は変わらないから安心して。あ、人体に影響もないから。」
悪びれもなく言われて、スザクは怒る気さえ起きなかった。
薬は即効性なのか、見る見るうちに四肢に力が失われていく。恐怖を感じたが、ロイドの言葉を信じるしかない。
どれくらいで切れるのか、と疑問に思ったら、二時間くらいだとさらりと答えた。
「うん、だから、急いでやらなきゃね」
「、何、を……」
かろうじて声は出せるが、微かにしか出ず、苦しい。
されるがままになるというのも気に入らないし、横暴だという非難もわく。
しかし結局は二時間、我慢するしかない。
ロイドがパイロットスーツの前身のチャックを下していく。
筋肉の付いた胸板が露になり、その上をロイドの手の平が滑っていった。
パイロットスーツの中に指をさしこんで、前日の行為によって赤く尖った箇所をぎゅっとつかまれた。
「っ、」
「君のここが、どれくらいまで感じるのか、気になってね。」
やっぱり、こういう非常識な探究心か。スザクはあきれながらも、感じてしまう自分を恥じた。
悔しいから声は出さないように我慢しよう、と唇をかむ。
「んっ、く、」
「我慢しなくてもいいのに。がんばるねぇ。」
ロイドは直も胸の突起を刺激し続ける。指を使って全体をこねるようにされ、いいように弄られているのに抵抗が出来ない。
スザクはきゅっと目をつぶり、早くこの時間が終わるようにと祈った。
しばらくして、遠慮なく触れていたロイドの指の感覚が無くなったかと思うと、突起に鋭い痛みが走った。
「な、……?」
驚いて目を開けると、自分の胸に細い針のようなものと、コードのつながった円形の布シールのようなものが貼られていた。
何をされるのか分からない恐怖心に、スザクはロイドをにらみつける。しかし、すでに熱を帯びた瞳で迫力がなかった。
「これから、数秒間に一回のペースで微弱電流を流すから。イきたいときは我慢せずにイきなさい。」
「や、です……!」
胸だけの刺激だけで達しろというのか。
スザクは屈辱に眉をひそめた。はっきりと拒絶の意を示したが、ロイドはいつものように笑うだけだ。
「じゃあ、スタート。」
「くっ、あぁっ、……!」
スイッチを押され、胸の先にびりびりと電撃が走った。いきなりの衝撃に、大きく声が漏れる。
一瞬の刺激を感じやすい部分に流され、ひりひりとソコが揺れるような感覚とともに、焦れたような快感が下肢にまで達する。
衝撃後に意識を落ち着かせようとしていると、ふたたび電流が流れてきた。
「ぁっ、……」
「気持ちいい?」
「や、揉まない、で……」
ロイドが面白そうに、スザクの胸を揉みしだいた。
ますます感覚が鋭敏になっていって、直接的な刺激を与えられない箇所が涙を流し始める。
まずい、このままだと……。
本当にすぐに達してしまいそうだ。
胸だけでイってしまうという恥辱のみならず、仕事中に、しかもパイロットスーツを汚してしまうなんてスザクは嫌でたまらなかった。仕方なく、ロイドに息を途切れ途切れに懇願する。
「ロイド、さ…ん、脱がして、くださ、い」
「えー?」
「汚すの、いやなんです……!」
スザクが強く主張すると、ロイドのメガネが光った気がした。
今まで一度も触れていなかったスザク自身をいきなりぎゅっとつかむ。
スザクが小さく喘ぐと、唇が触れるくらいに顔を近づけて、いつもと違う声で囁いた。
「ダメだよ。このままイきなさい。」
有無も言わさない、上官命令だ。スザクは絶望を感じ、その目からは涙が流れてきた。体の自由が効かないせいで、顔を覆うことも出来ない。みじめで汚れている自分に、嫌悪感が沸いた。ルルーシュの顔が浮かぶ。
「っ、く…離して、くださ…い」
「それもダメ、だ。どうしてだろう。というか、無理、だね。」
「ぇっ、ん……」
ロイドの言葉の意味を模索した瞬間、その唇をふさがれた。
「ん、ふぁ、……」
舌を絡め取られ、唾液を注がれる。恋人同士のようなキス。
こんなキスを彼がするなんて、意外だった。
自由が効かない体を、ぎゅっと抱きすくめられる。すっと心が軽くなった。
スザクはこういったスキンシップが好きなのだ。
「ロイド、さん……?」
「スザクくん……」
真摯なアイスブルーの瞳は、ルルーシュとはまた違った聡明な輝きを持つ。
スザクはとろんとした目でそれをうかがった。
いつもとは違う雰囲気が二人の間を流れていた最中、特派研究室の扉が開かれた。
2007/10/4 終わり