狭い浴室に真っ白な湯気がたちこむ様に、スザクはごくりと唾を飲み込む。
ついこの前日本に来たブリタニアの皇子が、書物で読んだと言って湯船につかりたがったのだ。
実は初めて彼と会った時、感情に任せてひどいことを言ってしまった負い目があるので、スザクは仕方なくそれを了承した。
スザクが頷くと、ルルーシュはありがとうと控え目に笑った。細められた紫の瞳が綺麗だと思う。
(ルルーシュは男だ)
スザクは首を左右に振りながら、桶にお湯をくんでルルーシュに渡す。
「これでまず体を洗うんだよ」
タオルを手渡すと、ルルーシュは体をごしごしと洗い始めた。日本人とは違く、真っ白な肌は、蒸気のせいもありすぐにピンク色に染まっていき、スザクはあわてて目をそらした。
心音が高まるのを振り切るように、スザクも体を洗い始めた。
「ぁっ、ルルー、シュ」
幼い頃の甘酸っぱい回想はそこでストップされた。
スザクは眉を潜めながら快楽を享受する。さっき思いきり足を動かしたら、浴槽に当たって痛い思いをした。それなのにルルーシュは構わずスザク自身を口に含み愛撫を続ける。割り開いた足を時々労るように撫でてくれるから、ぶつけたことは気付いているのだろうけど。
「ゃ、そればっかり、やだっ……」
もう限界まで体を高められて、それでもいけないつらさにスザクは涙目になって懇願する。しかしルルーシュは意地悪に笑って、
「いきたいならいっていいぞ?」
そしらぬ顔でまた舐め続ける。細長い指で後口をからかうようにノックされた。ソコに埋めてくれなければもういけない、なんて知ってる癖に、本当にひどい。
「ぁっ、ぁ、あん、ルル……」
七年前は、浴室に二人一緒に入ることさえ緊張したのに、ずいぶん成長したものだ。スザクはかなりの悪ガキで、ルルーシュは上品で控え目な可愛い子だったのに、一体どうしてこんなことに?
人生どんな風に転ぶかわからないものだ。
「ぁ、いく……」
先端を強く吸われて、わずかな白濁が吐きだされた。また一回目はいれてもらえなかった。スザクは紅潮した頬を膨らませルルーシュを見る。
「なに怒ってるんだよ?」
面白そうにルルーシュはスザクにキスをした。いよいよムッとした気持ちが強くなって、幼い時から感じていた恋情は、もう一生教えてなんてやらない、と反発心が沸く。
「スザク?どうした?」
ルルーシュが耳たぶをちゅっと吸った。スザクは平静を装いながら、顔をそらす。
「小さい時は、ルルーシュはもっと可愛かったのに。」
「あぁ、一緒に入ったこと、あったな」
ルルーシュの瞳が懐かしげに細められた。昔より大人っぽくて、でも覚えていてくれたことに気持ちが浮上する。
「どうしてこんなに意地悪になっちゃったんだろうね」
嫌味な台詞と裏腹に、ぎゅっと抱きつくと、お互いの体が密着する。ルルーシュだってもう限界に近い。
「それを言ったらスザクだって随分変わったぞ」
「むぅ、」
「可愛かったなぁ。初めて入った時なんて、意識バリバリしてますって感じで、耳まで真っ赤にしてわざと目をそらして?」
「なっ、ルルーシュ、君、知って…!?」
焦るスザクにルルーシュは、もう一度ふっと笑って、
「でも、昔も今も変わらず好きだよ、スザク…」
そんな言葉を言われたら、負の感情なんて一気に吹き飛んでしまう。
本当は、一回目にいれてくれないのも、散々ジラすのも、スザクのためを思ってだということを知ってる。(言葉で攻めるのはわからないケド)
スザクを許してくれるのも、受けとめてくれるのも、欲しいものをくれるのも、ルルーシュの変わらない優しさなのだ。
でも、スザクの方が絶対先に好きだったと思っていたのに、違かったというのはなんだか悔しくて、スザクは上擦った声で告げた。
「僕は、今の方がもっと好きっ、…ぁ、」
入り口に、かたくなったルルーシュを押し当てられた。向かい合うこの体位が、スザクは一番好きだ。
「スザク、可愛い……」
「ぁっ、ルルーシュ、ぅ、ん……」
熱い内壁に熱望していたものを埋め込まれて、ナカは歓喜に収縮した。今日はいつもと違って最初から激しく、ルルーシュ自身が抜き刺しされる。もしかしたら、ジラしたことに少し反省してくれたのかもしれない。
「スザク、好きだ、」
「ぁっ、ルル、シュ、ルル…ん…」
ひとつになれた幸せに酔い知れながら、スザクはルルーシュにキスをねだった。上からも下からも掻き乱される。初めてシた時は恐怖でいっぱいだった強すぎる快感も、今はルルーシュと一緒に溶けてしまってもいいとまで思う。
ルルーシュはどう思っているのかな。ルルーシュもこの幸せを、感じてくれているのかな。
不安になってルルーシュを見ると、視線だけで微笑まれた。まだまだ余裕の表情だ。
「ルルーシュ、気持ちい…?」
「うん、」
「本当に?僕のナカ、いい…?」
「あんまり煽るなよ、スザク」
内壁を進むルルーシュが大きくなった。少し眉をひそめたルルーシュにスザクは嬉しくなる。
「ね…、」
「はいはい…、」
甘えた声を出してキスをねだったら、優しく触れるだけのキスをくれた。ルルーシュはスザクを抱き上げ、固い浴室に押し付けてしまった背中を撫でてくれた。
「ん……」
さらに口付けを深くして、ルルーシュの体温を感じる。名残惜しげに唇が離され、しばらく二人で見つめあう。
「…くしゅん!」
湯船にもつからずに抱き合っていたから、体がすっかり冷えてしまっていたらしい。くしゃみをするルルーシュにふきだしながら、スザクはルルーシュに抱きついた。
「湯船つかろっか?」
「そうだな。またお湯を温めなくちゃ」
ルルーシュは電気代がもったいない、なんてぶつぶつ言いながら、すっかりぬるま湯になった湯船にスザクの体を支えながらつかった。つながった箇所に浮力が働いて、違うところを擦られる感覚に腰を揺らしてしまう。
「またたってる。」
ルルーシュがからかうようにスザク自身を握った。スザクは顔が熱くなるのを感じながら、唇を尖らせた。
「また体力バカとか言う?」
「そうかも。でもいいよ。可愛いから。」
「ルルーシュも大きくなってるよ。」
「そ。だから、スザクがもっと欲しい…」
「もぅ……」
ルルーシュの甘い声に、スザクも顔が緩んでしまう。
だんだんと熱くなるお湯と一緒に、もう一度激しく繋がり始まるのも、時間の問題みたいだ。
ルルーシュに優しく頭を撫でられた。スザクは再びルルーシュに抱きつく。
とりあえず、湯気に上がらないように気を付けなくちゃね。
至近距離で囁くと、七年前と変わらぬ瞳が、すっと細められ、噛みつくようなキスをされた。
2007/4/26 終わり