下腹部から鳴る振動音を気にしながら、スザクはアシュフォード学園の校門をくぐった。ふらふらとした足つきで、ルルーシュの元へ向かう。ルルーシュは現在、学生寮ではなく、妹のナナリーと学園内を間借りして暮らしている。そのことを聞いたとき、やはり皇子として苦労を強いられているのだと切なくなった。ナナリーの穏やかでやさしい雰囲気がスザクは好きだ。ルルーシュもそうなのだろうと思う。ルルーシュは、ナナリーの幸せを一番に願っている。
だから、スザクはどうするべきか悩んだ。このままルルーシュとナナリーが平和に過ごしている領域に、こんなに淫らに息を荒げている自分が果たして踏み込んでいいのだろうか。ルルーシュを求める気持ちは強いが、自分ひとりで我慢すればそれだけですむのではないか。
熱は薬のせいか大分引いているように感じた。しかしその分、内壁の熱さを顕著に感じられるようになっている。中の振動は最大限にして、もう何度も射精をしているが、単調な金属の動きに快楽が慣れてきてしまっている。この熱はもう、一人ではどうすることも出来ないように感じた。
一歩ずつ足を進めながら、諦めも悪く悩んでいると、後ろから声をかけられた。
「スザク…?」
「ル、ルーシュ…」
驚きながらも、スザクの疲弊した様子にルルーシュは駆け寄った。肩を支えてやると、触れられただけでスザクは大きく反応してしまった。
「はぁ、ルルー、シュ、…」
「大丈夫か?今日は軍に行ったと聞いていたが…?」
「ぁっ、……ご、めん、」
ルルーシュの声を聞いただけで、中が収縮を再開しだした。呑み込んでいる内壁が、刺激を求めて淫音を立てる。ルルーシュはそれに気付いたのか、それともスザクのただならぬ様子に気を使ってか、スザクの肩を抱き歩を進めた。
「とりあえず、俺の部屋に行こう。」
「く、ぅ…」
スザクは歯を食いしばりながら、ルルーシュについていく。本当は今すぐその綺麗な唇に噛み付きたかった。早くルルーシュを体のナカに欲しい。本人を目の前にして、スザクの悩みはすっかり吹き飛んでしまった。
汚いな、僕は…。スザクは自嘲する。結局はルルーシュのやさしさに甘えることとなってしまいそうだ。
「スザク…!?」
ルルーシュと部屋に入った瞬間、そのまま唇を奪った。積極的に舌を絡めると、下腹部にゾクンと刺激が届いた。ルルーシュはスザクの好きなように、舌を差し出してくれた。クチュクチュと唾液の混ざり合う音が、薄暗い部屋に響いた。
「スザク、落ち着け、どうしたんだ?」
やっと唇が離れると、ルルーシュが優しく問いかけた。余裕のなくなっているスザクをあやすように、頭を撫でてくれる。
そのままベッドまで導かれ、座ると、スザクもだんだんと落ち着きを取り戻した。
「風邪を引いて、軍の上官の人に、薬を試されたんだ…」
「それって、実験?お前、技術部なんだろ?」
「科学者の人だから…多分研究熱心なんだと思う」
「はぁ、それで、その薬がこの原因?」
ルルーシュはすぐに思考を切り替えて、スザクの自身を愛撫してくれた。濡れた下着が気持ち悪いだろうと、そっとおろしてくれた。スザクは羞恥も感じはしたが、それよりルルーシュの優しさがうれしかった。
「まったく、変なことはされるなよ?」
「わかってる」
「嫌なことは嫌って言えよ。忠誠を誓うのと従順になるのは違う」
「うん、わかってる」
なんだかんだいって、ルルーシュはお兄さん気質だった。そうやって優しい小言を聞くのも、実はスザクは好きだった。
けれどもとりあえずは、この体を鎮めてほしいかな。スザクはルルーシュの体を引いて、ベッドに倒れこんだ。
「なんだよ、これ。」
「とって。」
「その上官に入れられたのか?」
丸出しになっていた下半身に、埋め込まれた紫色の機械。ルルーシュは振動音を立てるそれに眉をひそめた。
「いい人だよ、多分。愛している人に鎮めてもらえって言われた。熱は下がったみたいなんだけど、ココだけひどくうずくんだ。ねぇ、ルルーシュ…」
ねだるような声になってしまい、恥ずかしくなった。ルルーシュは意図を理解してくれたようで、スザクのナカにあるそれをゆっくりと引き抜いた。
「まったく、世話が焼ける」
「ごめんなさい…」
「いいよ、愛してるから」
さらっと言ってのけて、ぐっと体の距離が縮まった。何かをもとめて収縮していた蕾に、ルルーシュ自身が埋め込まれていく。ルルーシュはスザクをあおるように、今までスザクのナカにあったそれにちゅっとキスをした。
「ぁ、…くぅ、ん…」
「まだ、ナカはうずくか?」
「うん、もっと奥…もっと擦って…」
ルルーシュの瞳が至近距離で細まった。ちょうど、あの機械と同じ紫色だ。それはとても綺麗で、高貴な色。ふとした瞬間は、とても怜悧で、でも柔らかな今の色が、一番ルルーシュには合っていると思う。
「愛してるよ、スザク」
「ルルー、シュ…」
甘く優しいささやきとともに、首筋にキスを落とされた。腰の律動が大きくなり、それとともに絶頂が近づいてくる。
ルルーシュの部屋の大きな窓からの月明かりが、二人が抱き合うベッドを明るく照らしていた。ルルーシュの髪から一粒の汗が零れ落ち、それがきらきらと輝いていた。
「ルルーシュ、もう……」
「あぁ、一緒に、スザク…」
「はぁ…ぁンっ…!」
大きな喘ぎとともに、快楽の証は勢いよく放出された。同時に内壁にルルーシュの精液がどくどくと注ぎ込まれた。
じわじわと浸透していくような感触に、スザクは目を閉じた。
「ルルーシュ、ありがとう」
「うん」
何が、とは聞かないんだな。ぼんやりと思った。それが、彼の優しさなのだと理解する。
軍に入っている自分が、ルルーシュの、それからナナリーの平和と安寧を守れるようにしたいと思う。
こうして、甘えられる場所を作ってくれる彼らに出来ることは、それくらいなのだ。
ルルーシュと指先を絡めあう。暖かいその手も、月光に照らされた紫の瞳も、何も言わないけれど、ひどく暖かくて、涙が出そうなほどだ。ルルーシュは何も提示しない。スザクの意見も、生き方も、過去も。スザクの困惑も、分かっていて何も言わない。それでもスザクは残酷なその優しさに、縋っていたいと思う。唯一の自分を保つ、砦のようなものなのだ。
指先の力を強めた。ルルーシュの熱を感じられた。
生きている。彼もスザクも、今生きている。
つながりあった部分から、ルルーシュの考えていること、全て分かったらいいのに。
そんな野暮なことを思うと同時に、何を思ってか再び口付けしてくれる彼が、やっぱり好きだなぁと再確認したのだった。
2007/4/9
終