保健室にて

体育の授業は、マラソンだった。
どうしてこんなに肌寒くなってから、とルルーシュは不平を漏らしていたが、スザクは結構この時間が好きだった。
なぜかというと、ルルーシュと肩を並べて走ることが出来るからだ。短距離走だとこうはいかない。
そう本音を伝えたら、ルルーシュは少し怒っていた。

「確かにお前に運動では勝てた試しはないが」
「うん、でもルルーシュ、最近鍛えてるよね」
「わかるか?」
「前は、これくらいでもう息が切れてたもの」

スザクがからかうように言ったら、余計な御世話だ!と顔を赤くしていた。この調子だと、息もすぐ上がってしまうのではないかとちょっと不安になる。
今はまだ余裕を持って振られている左右の腕には、細いながらも美しい筋肉がついている。幼いころの折れそうで華奢な体のルルーシュとの違いに、少し胸が痛くなる。

「どうして鍛えてるの」
「え」
「ルルーシュは、別に鍛えなくていいのにさ」

ルルーシュはスザクに目を向けた。面白くなさそうな表情を感じ取ってか、ふっと笑みをこぼす。

「スザクに、いつまでも負けてられないだろ」
「うそ」
「即否定されるとちょっと傷つくぞ」
「だって無理だもん」
「わかってるけどさ、」

ルルーシュは無駄なことはしない。だから、やるということはそれは必要なのだ。力によって、守るべきものを守るために。
ルルーシュの気持ちもよくわかるのだけど、スザクには複雑な感情が浮かぶ。ナナリーもルルーシュも、スザクにとっては守りたい対象のままなのだろう。

「おい、スザ……っあ、」
「あ、ルルーシュ!」

スザクの表情に気を取られていたのか、横にいたルルーシュが盛大な音をたてて転んだ。スザクはあわてて駆け寄る。ルルーシュは膝をすりむいてしまったようだった。

「大丈夫?」
「あぁ、」

立ちあがろうとして、ルルーシュが顔をしかめた。手を貸してやり、膝に目をやると、わずかだが血が出ていた。

「ルルーシュ、保健室行こう」
「え、でも、」
「大丈夫。あ、リヴァル!先生に保健室に行くって言っといてくれる?」
「あぁ、わかった〜。ルルーシュ大丈夫か?」
「悪いな」

丁度後ろを走っていたリヴァルに伝言を頼み、スザクはルルーシュの肩を抱いて保健室へと向かった。

「先生は留守みたいだね」
「そうだな」

適当に置いてある消毒液とガーゼを手にとり、座っているルルーシュに治療を施した。もちろん、きちんと洗浄するのも忘れずに。包帯を巻き始めたら、ルルーシュが呆れたように声をかけた。

「大げさだな」
「そう?消毒は染みない?」
「あぁ、大丈夫だ。ずいぶん慣れているんだな」
「ほら、昔から生傷絶えなかったから」
「確かに」

ルルーシュが笑った。膝元にかがんでいるスザクの頭を優しく撫でてくれる。包帯を巻き終えて、顔を上げると、ルルーシュが真剣な表情でこちらを見つめていた。
まだ授業中の保健室の中は、しんと静まりかえっている。まだ校庭では体育の授業が行われており、生徒たちの声も窓の外から聞こえる。ただ、真白なカーテンによって隔離されたそこは、神聖な二人だけの場所のように、どこか非現実じみていた。

「ありがとう、スザク」
「う、うん……」

ルルーシュの真剣なまなざしに少し戸惑いながら、視線を外した。そうしたら膝に置いていた腕を引かれて、ルルーシュに抱き締められる体勢になってしまう。

「っ?ルルーシュ」

キスをされるのかと思い、ぎゅっと目を瞑った。しかし唇は重なることはなく、背中にひんやりとした感触が走る。はっと目を開けると、体操着が無遠慮にたくしあげられていた。

「ゃ、……」
「ここも、ここも。痕になってる」
「あ、ん……それは……」

軍法会議にかけられたときの傷は、まだ痕になって残っている。ルルーシュだって何度も見ているはずなのに、改めて指でなぞられると、変な気分になってくる。

「ルルーシュ、先生来ちゃうよ……」
「鍵はかけておいたから大丈夫」

準備万端すぎ…と呆れながら、スザクはルルーシュの頭に腕を回し引き寄せた。

「ぅ…ん、」
「いつもより興奮してる?」

ルルーシュが楽しそうにスザクの乳首を食んだ。鍵が閉まっているとは言え、いつ誰がくるかもわからない学校で行為に及んでいることで、神経が敏感になっているようだ。ルルーシュは密着している腰をからかうように刺激してくる。

「もう、けが人らしくしててよ」

ルルーシュにペースを持っていかれて面白くないスザクは、彼の膝から立ち上がり、その場にかがんだ。

「スザク?」
「ルルーシュだって、固くなってるよ」

ジャージの上からルルーシュ自身に触れると、既に存在を主張し始めていた。そのままソコに唇を寄せる。

「っ、」

ルルーシュがピクンと腰を揺らした。感じているようで、顰められた眉毛が綺麗だと思った。

「ん、……」

ジャージのゴムの部分を咥えておろし、ビキニパンツの上からぱくりとソレを咥える。固くなっているソコを口内全体で扱くように刺激してやる。それから先端を取り出して、直接吸いつくように唇をすぼめた。

「っ、スザク、」
「いいよ、イって」

口の中に入れたまま言うと、ルルーシュ自身が大きく震えて絶頂を迎えた。苦い味が口内に広がるが、気にならない。ルルーシュを気持ちよくさせることが出来て、満足したスザクが顔を上げると、ルルーシュは顔を紅潮させながらも不機嫌そうだ。

「どうしたの、ルルーシュ?」
「スザク、お前、自分は先に一人でイくのは嫌だって言ってる癖に、俺はすぐにイかせるんだな」

あ、そういえば。ルルーシュを気持ちよくさせたいという思いが先走ってしまったようだ。スザクは舌を出して謝った。

「ごめんね。でも、僕は我慢出来るけど、ルルーシュは早いじゃない」
「言ったな、」

ルルーシュも本気で怒ってはいないのだろうけど、スザクの舌を乱暴に絡め取った。

「ん、……ふぁ……」

しばらくして、優しくなったルルーシュの唇を存分に味わう。
本日初めてのキス。ついでに、ルルーシュと触れ合うのは三日ぶりくらいだ。お互いにやることがあって、すれ違いとも言える生活だった。

保健室の中は暖房が効いていて温かい。下肢をさらけ出すような格好になっても、寒さは感じられなかった。けれど、羞恥心はある。ルルーシュの方は上下共に脱いでいないというのも、それを助長させる。

「ぁ、あ…ぅ」

唇を重ねながら、後を指で慣らされる。何度経験しても慣れない感触に、スザクは体を震わせた。一度達しているルルーシュの自身と、すっかり起ちあがって、透明の液体を先端から溢している自身を擦りつける。ルルーシュ自身も再び固さを取り戻しているようだ。

「ルルーシュ、早く……」

早くルルーシュを受け入れたくて、自身の蜜を手に取り、己の指をソコに埋めた。ぐちゅぐちゅと卑猥な音が響く。

「くっ、いくぞ、」
「ぅっ、あぁっ……!」

入口を割り開かれる感触に、大きく喘ぐ。それから自重でどんどんと埋め込まれていくルルーシュの形を、まるで刻みこむように内部が収縮した。

「ぁ、ふぁ、ルルーシュ……!」
「スザク……!」

二人同時に絶頂を迎える。体が甘ったるいけだるさで支配されて、スザクはルルーシュの肩に寄りかかって、小さく呼吸を繰り返した。
しばらくして予鈴が鳴り響く。二人ははっとして、最低限の処理をした後に立ちあがる。

「腰、大丈夫か?」
「うん……」
「どうした?」
「まさか、最後までやるとは思わなかったから」

ルルーシュを気持ちよくさせたかっただけなんだけど。そう続けたら、ルルーシュは声をたてて笑った。

「なんだよ?」
「いや、スザク、」
「うん?」
「俺たち二人で、出来ないことはないんだよ」

前に、スザクが言った言葉を、含みを持たせて言われて、スザクはぱっと赤面した。

「じゃあ、行こうか。授業が始まる」
「うん、そうだね。足は大丈夫?」
「あぁ。手当、ありがとう。」

手を繋いで保健室を後にした。 今夜はゆっくりルルーシュの部屋でしたいな、なんて思ったスザクだった。




2007/12/19 終わり
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