愛のカタチ
Eros
悲痛な声がする。
まるで、いじめているみたいだと、思った。
「ぁっ、う……ぅ……」
薄暗い部屋で、泣いているような、けれど明らかにそれとは違う艶やかな、色を含んだ喘ぎが耳に届く。
うっすらと額に汗をにじませながら、ジノは自分が組み敷いているその人を見下ろした。
顔を両腕で隠し、まるで恥じらっているような様子を見せながら、苦しそうに唇をかみしめている。
一方で、上下する胸にぴん、と張った飾りは、淡く色づいて誘っているように揺らぐし、下では反応を見せている性器が濡れそぼりながら光っている。
ジノは無意識につばを飲み込んだ。
同性とするのは初めてだった。その狭さに不安になって、本当にいいのか、と聞くと、構わない、と彼は言った。
指を一本、潤滑剤とともに挿入する。クチ、クチ…と内壁を拡げようと指を動かすが、ものすごい力で拒まれているようだった。ジノは体を倒し、スザクの頭を撫でながら、ナカの拡張に専念する。
「スザク、両足上げて。」
「やっ、」
「拡げにくいんだ、協力してくれないか?」
頼み込むと、スザクはしぶしぶと両足を上げ、ソコをジノへと差し出した。前は萎えていない。ずいぶんと慣れているな、と思う。ただ、最近は使っていなかったのだろう、緊張状態のソコへの指を、強引に二本に増やした。
「ぁ、ふぁ、ぁ……」
「本当に、入るのか?これ」
ジェルをさらに垂らしこんでみるものの、辛そうに指を締めつけるだけだ。スザクの耳元で不安げに問うと、スザクはこくこくと頷いた。顔を覆っていた腕を離し、潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。
「ジノ……」
「んー、何?欲しいの?」
甘えるようにキスをしてくるので、指を引き抜いて抱きしめてやった。安心したように瞳を閉じるので、ジノはこっちの方がいいな、と思う。
ジノの中で、ソコを使って結合するという発想はなかった。誘ったのはスザクだ。
きっとすごく、今の彼は不安定なのだと思う。
求められることは嫌いじゃない。けれど、与えた後に、間違いだった、なんて、後悔されるのは嫌だった。
スザクは弱いところがある。
だから、いつも、表面上は何も感じないように取り繕って、その手を汚している。
それが優しさだ、弱さだ、などとジノは言えない。きっとそんなことを言ったら、スザクの覚悟に失礼になる。
そうした態度が功を奏したのだろうか、スザクとジノの関係は良好だった。信頼の足る人物であると、彼に判断されたのだと思う。
それが純粋にうれしかったし、答えてやりたいと思った。スザクにはそう思わせる何かがあった。
もしかしたらただの、一目ぼれっていうやつだったのかもしれないが。
「舌」
「はいはい」
ご要望通り、口内に舌を入れ、深いキスへと発展させる。スザクの小さなそれを捉えると、一度ぴん、と張った後に、ちゅくちゅくと吸いつくように答えてくる。ぬめりとした舌で歯列をなぞり、口蓋の奥までを苦しくなるほど舌を入れてやるのが、スザクのお気に入りのようだった。
「ふぁ…」
「もう満足ですか?」
「ん……ジノの、好き……」
ジノの長い舌が好き、と、最近の行為ではよく言われる。
嫌い、よりは好きと思われたい。けれど、それはジノ自身のことなのだろうか、ジノは今まで感じたことのない疑問を感じる。ジノの舌も、指も、ジノの一部だ。それを好きだということは、スザクはジノのことが好きだと言える。それでいいはずなのに、何故だか違和感を感じる。
「もっといる?」
「ん……」
赤い舌をこちらに差し出してくる。舌っ足らずのまま、与えられる快楽にぼんやりとしているスザクは、可愛らしくて妖艶だ。感じる違和感はきっと、彼が違う誰かを求めていると、知っているから。彼の行動が、違和感と戸惑いから行われていることだと、気付いてしまっているから。
ジノはその唇に口付けした。彼に好きだと言われた、その舌を分け与えた。
スザクに何か与えられればいい。彼の強さが損なわれなければいい。
彼の口腔内を、舐めて、すすって、味わった。
自分自身に、見返りはいらない。ただ、戦場を駆けるその美しさと怜悧さを求めている。
ジノはそんな、理性染みた感覚に、なんて美しい愛なんだろう、などと、大げさに天を仰ぎたい気分になった。
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