何かを掴んだ気がした。でもそれは、スザクにとってはとても信じがたいことで、受け入れたくないことだった。目を反らすことはもう出来なくなっていたのに。ギアスの力のせいだけじゃない。スザクは、都合の良い記憶以外を排除した。
「スザク」
ルルーシュの声は、慈愛に満ちているようで、欺満に溢れている。それを認識しているにも関わらず、スザクは彼の腕にすがった。
自分は誰かの為に死にたかった。
それは、君の為じゃなくて良かった。
君に、自信の持てる自分を見せたかった。
結局そんな自分はいなかったのだと、現実を突き付けられた。突き返した騎士の証しは、スザクに偽りを背負って行くよりは安らぎを与えた。
「ルルーシュ、抱いてくれないか?」
僕を、俺を。
君に見て欲しかった。きっとその為なら、スザクは死んでも良かった。
毎晩のように、ルルーシュの元に行く。ルルーシュは何か言いたそうだったが、何も言わなかった。
それに甘えていたのだと思う。
愛しているという偽りの睦言なんかよりも確かな、証拠と象徴を感じていたかった。繋がっていたかった。結局何も伝わってはいなかったかもしれない。だけどその時確かにスザクは生きていること、存在していることを感じることができた。
『生きろ、スザク』
埋め込まれたルルーシュ自身から伝わる、言葉にならない熱に、スザクは遂ぞ向き合うことは出来なかった。それがスザクの不安定さの原因なのか、切欠なのか、今となっては分からない。
虚しい行為のように思われるかもしれない。しかし、深層心理の中に、ルルーシュの、絶対遵守の命令は刻み込まれ、ごまかしの利かない鎖となってスザクを締め付けていた。その救いとなっていたのは、熱の楔となってスザクを突き刺す、まるで断罪のようなルルーシュとの交わりであったのだから、肯定性も残しては置きたい、そう願っている。
2008/4/4 終わり