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It's my Destiny
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やっとのことで薄く眼を開けると、目の前にはルルーシュの顔がある。紫色の瞳は高貴に輝いていて、スザクの好きな色だ。ぼんやりとそう思った後、はっとした。
(キス、されてる……?)
そう認識した途端に、顔が焼けるように熱くなった。どうしてルルーシュが?脳内をハテナマークに支配されているうちに、口付けはもっと深くなっていく。
「ふぁ、ぁむ……」
唇を食まれるように吸われて、下肢にまで衝撃が走っていく。感じている、と悟られたくなくて、喘ぎながらも眠ったふりをしようと目を瞑った。そうしたらますますルルーシュの熱い唇の形を実感してしまって、我慢できずに彼の襟元を引き寄せてしまった。
(なんで?すごく気持ちいい)
(ルルーシュ、ルルーシュ……)
もっと、なんてうっかり声に出しそうになってしまった。開いた唇から舌が侵入してきたとき、スザクは声をあげてしまった。そこでようやく、ルルーシュはスザクが起きたと気付いたようだった。
「ふぁ、……ルルーシュ」
「ごめん、」
ルルーシュの目元が赤い。照れているのだろうか。かわいいと思った。くすっとスザクは笑うのだけど、ルルーシュは本気で申し訳なさそうに、すっと体を遠ざける。
「え、」
「おやすみ」
そのまま背中を向けて、布団にくるまってしまった。どうやらもう手もつないでくれないみたいだ。
(こういうのなんて言うんだっけ……)
スザクは濡れた自分の唇に触れた。まだ熱くて、当分眠れそうにない。ルルーシュのせいだっていうのに、彼はキスの理由も告げずに寝てしまった。ちょっとひどくないか。
(どうして、何故。)
湿った指を、更に舌先で舐めてみた。じわりじわり、と胸が痛み始める。
ルルーシュの背中は小さく丸まっていて、無言の拒絶が見て取れた。さらさらの黒髪が時折、白いスーツの上を流れる。しんとした部屋の中、張りつめた空気を振り払うように、スザクは布団を深くかぶりなおした。
ルルーシュの寝息が微かに聞こえ始める。
(あぁ、そうだ。生殺し・だ。)
スザクは高ぶっている自分の気持ちを叱咤した。加速し続ける心音は、横で眠る彼に触れたい、そう思っている自分自身を肯定している。
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